設立趣意

日本老年臨床心理学会は、2018年3月11日に設立されました。

高齢者や高齢者をとりまく人々に対する心理的支援に関心を持つ人々が、科学的な根拠に基づいた心理学を基礎に、

高齢者の心に向き合い、研究活動をおこなうことを目的にしています。

多くの皆さんの入会をお待ちしています。

 

「日本老年臨床心理学会」設立趣意書

 

 

 

 日本の人口高齢化は、世界でも類をみないほど速く、未曾有の状況にますます進んでいます。それに対応するための社会保障制度も大きな転換期を迎えており、高齢者医療は入院中心から、地域医療に転換されつつあり、介護等と協働して地域包括ケア体制を作ることが目指されています。とくに、認知症にどのように対応していくのか、認知症となっても地域で暮らし続けることをどのように支援するのか、ということは、医療・介護だけでなく、国を挙げた大きな課題と位置づけられています。認知症の人が自宅や地域で質の高い生活を送ることを支援するためには、その症状に関する専門的な理解とともに、一人ひとりの高齢者やその家族の生活の歴史のなかで、動機づけや感情等の心理的理解に基づく支援が求められています。現在でも多くの老年臨床心理学の専門家が、さまざまな職域において、高齢のクライエントと接し、その生活の課題の解決に取り組み、支援をされているものと思います。それを個々の実践者の努力だけに留めるのではなく、成果を密に交換して、相互に質を高めていくこと、また隣接する領域に対して、科学的な心理学に基づく理論や方法について明確に提案できることが、今後の高齢者とそれを取り巻く人への生活の質を向上していくために不可欠なものです。

 

 心理学の国家資格「公認心理師」の創設にあたり、高齢者やその支援に関わる人への心理的支援の重要性が高まっていくことは間違いありません。高齢者に関わる臨床心理学的支援の実践に携わる方、高齢者に関わる臨床心理学的支援の基礎となる理論や方法等を研究している方が結集し、高齢者とその周辺の人々に対する心理学的支援の方法や実践者への教育方法等について、議論し普及させていく場としての学術学会が必要だと考え、設立を提案させていただいた次第です。また、高齢者領域ではこれまでは心理職の職務が明確になっておらず、心理職が社会貢献できる職域への進出を可能とするための国等への働きかけを行っていく役割を果たすことも大きな課題だと認識しております。

 

 わが国が抱える高齢社会の諸問題の解決に、心理学も正面から貢献できる体制を整えていくことを目指して、多くの方がこの学会にご参加いただければと考えております。当面の活動としては、互いの成果を発表・議論、情報交換する研究大会および学術誌の発行、高齢者等向けのアセスメントや心理的支援方法に関する勉強会や研修会、標準的な理論や手法に関するテキスト等の出版物の発行などを行っていくことを予定しております。

 

 日本における「老年臨床心理学」の確立と普及について、多くの実践者、研究者等の関係者が集まり、高齢者への心理支援分野において、新しい国家資格にふさわしい質の向上に寄与することに貢献できる集まりとなれば幸いです。

 

 

 

2017年8月吉日

 

 

 

代表発起人会・代表 日本大学 長嶋紀一